ヤングケアラーについて
2025.04.11
ケアマネジャー
ヤングケアラーとは?
ヤングケアラーとは、家族の介護や日常生活の世話を過度に行っていると認められる子どもや若者を指します。2024年6月12日に施行された改正子ども・若者育成支援推進法では、ヤングケアラーの定義が初めて明記されました。
定義の詳細
改正法における「過度に」とは、子どもや若者が家族の介護や世話を行うことで、学業や社会生活に支障をきたす状態を指します。具体的には、遊びや勉強の時間が確保できず、身体的・精神的な負担が大きくなる状況を指します。
具体例
ヤングケアラーに該当する可能性のある状況として、以下が挙げられます:
- 障害や病気のある家族の身の回りの世話や介助。
- 働く親に代わって、幼い兄弟姉妹の世話をする。
- 家計を支えるために働き、同時に障害や病気のある家族を助ける。
- アルコールや薬物の問題を抱える家族への対応。
- 慢性的な病気に罹っている家族の看病。
ヤングケアラーが直面する問題
学業への影響
ヤングケアラーが抱える最も大きな問題の一つは、学業への影響です。家庭でのケアの負担が重いため、学校に集中できなくなることがあります。
- 出席できない
家族のケアが優先されるため、学校に行けないことが頻繁にあります。通院の付き添いや急な介護が必要になる場合、学校を休むことが増え、学業の進捗に遅れが生じます。 - 学習時間の不足
家庭内でのケアに多くの時間を割かれるため、宿題や自習の時間が取れません。これにより、学業の成績が低下したり、進学に対する不安を抱えることになります。 - 精神的な疲労感
ケアの負担により精神的にも疲れがたまり、学業に対するモチベーションが低下することがあります。ストレスや不安が溜まることで、集中力を欠き、学校生活全体に影響を与えることもあります。
就職への影響
ヤングケアラーは、将来の就職活動やキャリア形成にも影響を与えることがあります。
- 就職活動の時間が取れない
家庭内でのケアの時間が長いため、アルバイトやインターンシップなど、就職活動に必要な経験を積むことが難しくなります。そのため、就職市場で競争力を持つことが難しくなることがあります。 - 仕事とケアの両立が難しい
就職後もケアの負担が続くことが多いため、仕事と家庭のケアを両立させることが非常に困難です。ケアのために仕事を休むことが続いてしまったり、フルタイムの仕事を持つことが難しくなってしまったり、キャリアに影響を及ぼす可能性があります。 - 将来の不安
ケアを担っていることが原因で、社会的な経験が少なくなり、将来の職業選択に不安を抱えることがあります。また、キャリアアップのチャンスが限られることが多く、経済的な自立も困難になります。
友人関係への影響
ヤングケアラーは、家庭でのケアに多くの時間を費やすため、友達や同世代との交流が減少し、孤立感を感じることがあります。
- 社会的孤立
学校やクラブ活動、友人との遊びなどに参加できなくなるため、友人関係が築きにくくなり、孤独を感じることがあります。この社会的孤立が、精神的な健康にも悪影響を与えることがあります。 - 誤解や孤独感
他の子どもたちや友人たちが普通に学校生活を楽しんでいる一方で、ケアを担っている若者はその状況に対する理解が得られないことがあります。このため、友人からの理解や支援が得られず、孤独感や疎外感を抱えがちです。 - ストレスと不安
友人関係がうまくいかないことや、家庭の問題を抱えることによって、ストレスや不安が増し、精神的に不安定な状態に陥ることがあります。この精神的な負担は、学校生活や日常生活にも影響を及ぼします。
精神的・身体的な健康への影響
ヤングケアラーは、家族を支える責任が重いため、身体的・精神的な健康に深刻な影響を与えることがあります。
- 精神的ストレス
長時間のケアによる疲労や、家庭内での状況に対する不安が、うつ病や不安障害、ストレス障害の原因になることがあります。特に、若いうちから多くの責任を担うことで、心身のバランスが崩れることがあります。 - 身体的な健康の問題
ケアによって肉体的な疲労が溜まり、健康状態が悪化することもあります。重い家事や介護の負担が、肩こりや腰痛、睡眠不足などの身体的な問題を引き起こすこともあります。
経済的な負担
ヤングケアラーは、ケアをしている家庭の経済的負担にも影響を及ぼします。
- 収入の減少
家族のケアに時間を取られるため、アルバイトやパートタイムの仕事ができなかったり、フルタイムの仕事を持つことができない場合があります。これが家計に影響し、家庭全体の経済状況を悪化させることがあります。 - 将来の経済的自立への不安
学業やキャリアに対する時間が制限されるため、将来的に安定した収入源を確保することが難しくなる可能性があります。これが、長期的な経済的不安を生み出す要因となります。
ヤングケアラー支援の具体的な策
法制度の整備
- 改正子ども・若者育成支援推進法の施行(2024年6月)
この改正により、ヤングケアラーの支援が法律上明確化され、18歳以上の若者も支援対象に含まれるようになりました。
予算措置と財政支援
- ヤングケアラー支援体制構築事業の予算増額
令和5年度予算から、国の負担割合が2/3に引き上げられ、自治体の負担が1/3に軽減されました。これにより、自治体はより積極的に支援事業を実施できるようになりました。
教育現場での支援
- スクールソーシャルワーカーの配置
教育現場での支援として、スクールソーシャルワーカーが生徒やその家族への支援を行っています。これにより、ヤングケアラーの早期発見と適切な支援が可能となっています。
多機関連携と相談窓口の整備
- 関係機関の連携強化
福祉、介護、医療、教育などの関係機関が連携し、ヤングケアラーへの支援を行っています。これにより、専門職やボランティアへの研修が提供され、支援体制が強化されています。 - 相談窓口の設置
自治体や民間団体で、ヤングケアラー専用の相談窓口が設置されています。ヤングケアラー+住んでいる地域で検索すると各地域の相談窓口が確認できます。
ネットワーク形成と交流促進
- 相互ネットワークの形成
こども家庭庁では、ヤングケアラー同士や支援者同士の交流を促進するため、イベントやシンポジウムを開催しています。これにより、情報共有や支援の輪が広がっています。
まとめ:ヤングケアラー支援を考える
ヤングケアラー支援を考えるにあたり、まず彼らが直面する問題とその影響を理解することが重要です。学業への悪影響や社会的孤立といった具体的な課題に対して、相談窓口の設置や利用、法制度や自治体の取り組み、多機関連携のプロジェクトなど具体的な支援策が求められます。また、支援ネットワークの構築やヤングケアラー同士の交流グループ、専門家との連携による包括的支援も不可欠です。
支援の効果を最大化するためには、教育機関の協力と支援体制の確立や、啓発活動を通じた社会理解の促進が必要です。啓発ツールやキャンペーン、教育プログラムを通じてヤングケアラーの認知度を向上させることが、長期的なサポート体制の構築に繋がります。
総じて、ヤングケアラーを支援するためには、多方面からのアプローチと、長期的な視野に立った施策が重要です。ヤングケアラーが直面する困難を軽減し、彼らが安心して将来を見据えることのできる環境を整えることが社会全体の課題です。